感情を感じるのが怖い?


感情を無視しない方がいいのはわかっているけど、この不快な感情を感じるのが辛くて苦手という方も多いと思います。

感情は湧き上がると、脳内で化学反応が起こり、特定のホルモンや神経伝達物質が分泌されますが、これらの反応は短期間で終わると言われています。しかし、私たちがその感情をどう処理するか、どう考え続けるかがその後の感情の持続に大きな影響を与えるのです。


嫌な感情に飲み込まれた時、とても長い期間続いてしまうような感じに陥りますよね。でも、「感情は90秒しか続かない」と言われています。これは、身体の反応の仕組みが関係しています。心理学者であり、感情の研究者であるカレイ・ボイセン(Karely Boysen)博士によると、感情そのものは、脳が感覚的な刺激に反応して、神経伝達物質を放出することから始まります。これらの生理的な反応は通常、短時間で終了します。

例えば、怒りや悲しみ、驚きなどの感情が湧き上がったとき、それに対する身体的な反応—心拍数の上昇、呼吸の速さ、体温の変化—は一時的なものです。しかし、感情が続くかどうかは、その後の思考のプロセスに依存します。感情が生まれた後、私たちはそれをどう解釈し、どのように考え続けるかで、感情の強さや持続時間が決まるのです。

感情は一瞬で生まれますが、私たちはそれに対して反応し、意味を見出し、事実ではないことを勝手に想像し、その感情に関連する思考を重ねることで、その感情を「こねくり回して」しまいます。例えば、怒りを感じた場合、その怒りの原因を考え続け、相手の行動を何度も思い返すことで、感情が長引くことがあります。同様に、悲しみや不安も、過去の出来事や未来の不確実性に対する考えが繰り返されることで、感情が続きます。

このように、感情を思考でこねくり回すことで、その感情が脳内で強化され、長時間にわたって持続してしまうのです。このプロセスは、感情の「こじれ」を生み出し、私たちが本来感じていた感情から徐々にズレた思考に引き寄せられることになります。

「感情を感じ切る」というのは、感情が湧き上がった瞬間にそれを素直に感じ、余計な思考を加えずにその感情を受け入れ、体験することです。感情が湧いた時、それをただ受け入れて体験すれば、感情は自然に消えていきます。これは、感情の「ピーク」は短いものであるという事実に基づいています。感情を無理に抑え込んだり、反応を控えたりすると、それが内面で膨らみ、長引いてしまうことがあります。

例えば、怒りを感じたときに、その感情を否定することなく、ただ「今、私は怒っている」という事実を受け入れると、その怒りは次第に落ち着いていきます。思考を停止し、その感情に焦点を当てるだけで、感情は無理に引き延ばされることなく解消されます。

コツは、ゴチャゴチャと騒ぎ立てる頭に意識を向けず、ハートの方に意識をおろし、体の感覚に注目してみることです。「あー、私今怒ってるんな。私、怒ってる時は胸がギューッとするんだな。」といったように、どこに何が起こっているか観察してみます。感じながら、同時に思考をこねくり回すことはできないので、しっかりと感情と向き合ってあげることで、苦しまずに早く感情を解放させてあげることができるようになります。

この理論は、感情処理に関する心理学的な研究にも基づいています。アメリカの心理学者であるジョアン・ローダ(Joan B. Laird)博士は、感情をそのまま感じて処理することが、心の健康を保つために非常に効果的だと述べています。感情を否定したり抑えたりすることは、逆に身体的・精神的なストレスを引き起こす可能性が高いという研究結果があります。

また、マインドフルネスや瞑想などの実践でも、この「感情を感じ切る」アプローチが効果的だとされています。これらの方法では、感情を「観察する」ことを重視し、その感情が体にどのように現れているかを感じ取り、過去や未来に関する思考から解放されることで、感情が自然に消えるのを助けます。

感情が生まれた瞬間にそれを感じ、考え込みすぎずにその感情を体験することで、感情は早く解消されます。思考でこねくり回さずに感情を感じ切ることが、感情の解放と心の平穏をもたらす鍵となるのです。

日々の生活で感情が湧き上がった時に、その感情を無理に抑え込んだり、過剰に反応することなく、「今、私はこれを感じている」と認識し、ただ感じてみてくださいね。

関連記事

  1. 感情を無視しない:自愛のための大切なステップ

  2. 感情を感じるのが怖い?

  3. 感情を我慢することの弊害